@techreport{oai:jaxa.repo.nii.ac.jp:00005558, author = {森田, 泰弘 and 後藤, 晋一 and Morita, Yasuhiro and Goto, Shinichi}, month = {Feb}, note = {M-Vロケットの姿勢制御アルゴリズムについては、1990年代前半の開発期に当時世界最先端の制御理論であったH(sub ∞)制御を積極的に導入することに成功し、初号機以降の機体に適用してきた。H(sub ∞)制御はロバスト制御の範疇に属し、最適制御に代表される現代制御理論を発展させたもので、制御対象のダイナミクスの不確定性を許容して系の安定性(ロバスト安定性)を保証する理論である。事前にダイナミクスを検証することのできないロケットに適用することに真価があることを見抜いた先見であった。宇宙研が開発してきたMシリーズロケットとしては初めて、M-Vロケットは安定尾翼を装着していないため、ロバスト安定性の獲得は至上の命題である。当時この制御理論は理論的有効性がようやく示された段階にすぎなかった。産業界でもこの時点での応用例はごく限られたものにとどまり、ハードディスクの高速高精度制御や自動車のサスペンション制御など比較的小規模な対象においても本格的な実用化はそれ以降のことであった。加えて、ロケットのような複雑で大規模かつ原点に零点を持つ不安定な制御対象に対しては、この制御理論を直接適用することはできない。そこでM-Vロケットへの応用においては、H(sub ∞)制御理論の源論を拡張してロケット飛翔体へ適用するための新たな方法論を確立した。設計手法の有効性とロバスト安定性能は、初号機を含めた合計3回の飛翔結果により実証された。一方、90年代後半には、小惑星探査ミッションに対応するためにM-Vロケットの2段ステージを改良して新型M-Vロケットを開発する計画が始まった。第2段の制御アクチュエータは、コストダウンを目的に、応答性の良い液体噴射方式から応答遅れの大きい可動ノズル方式への大変更である。M-Vロケットでは、重力損失を最小化するために、第1段の分離と同時に第2段ロケットの点火を行うファイア・イン・ザ・ホール(FITH: Fire In The Hole)という特殊な段間分離方式を採用している。この分離方式は分離時に発生する擾乱が大きいため、制御アルゴリズムの性能次第では、応答遅れの大きい可動ノズルによる姿勢の収束に時間を要し、軌道投入精度の劣化を招く。したがって、新型M-Vロケットにおいては、制御対象の不確定性に対して、安定性だけでなく良好な応答性(ロバスト応答性)をも獲得することが必要となった。そこで、H(sub ∞)制御の後継として当時登場したばかりのμ制御理論を導入することに踏み切った。この制御理論は、ロバスト安定性だけでなくロバスト応答性も保証するもので、現在でも最も最先端の制御理論である。この制御理論の導入に成功した意義は大きい。ダイナミクスの不確定性を避けられないロケットの制御において、高い軌道投入精度を獲得するためにロバスト応答性は必須のものだからである。このような最先端の制御理論を衛星打上げ用ロケットに次々に適用しようという試みは世界にも例を見ないものであり、教育研究用のM-Vロケットだからこそ成し得たことであろう。これにより、M-Vロケットの制御においては、ロバスト安定性ばかりでなくロバスト応答性をも実現するに至り、ロケット飛翔体の高精度制御としてひとつの完成形を確立したと言える。設計手法の有効性は、合計4回の飛翔結果により実証されている。このような最先端の制御理論を搭載することにより、M-Vロケットは、世界で唯一惑星探査ミッションに活用可能な全段固体のロケットシステムとして、世界最高性能を誇るに至った。なお、M-VロケットのダイナミクスとH(sub ∞)制御適用の詳細については、「宇宙科学研究所報告特集第47号、M-V型ロケット(1号機から4号機まで)」を参照願いたい。, 資料番号: AA0064112013, レポート番号: JAXA-SP-07-023}, title = {M-Vロケットのダイナミクスと姿勢制御アルゴリズムの設計}, year = {2008} }